2008年10月27日

学力テスト1位「秋田に学べ」は大丈夫? 大学進学率は低迷 

2008.10.27 00:35

 文部科学省が実施した「全国学力テスト」で、2年連続トップの成績を収めた秋田県に対し、その秘訣(ひけつ)を学ぼうと、全国の教育委員会や地方議員らによる“秋田詣で”が続いている。しかし、「秋田を見習って大丈夫なのか」と疑問を呈するのは、ほかならぬ秋田県内の教育関係者。「競争より横並びが大事」という県民性が成績の底上げを実現する一方、大学進学ではふるわないという、秋田の特殊事情があるためだ。(宮原啓彰)

 秋田県は平成19、20年度の全国学力テストで、小学生は全4科目がすべてトップ、中学生も1〜3位に入った。

 好成績の理由は少人数教育との見方が有力で、急激な少子化のため全国に先駆けて県全域で少人数学級に移行した事情が背景にある。また、県教委が19年度の全国学力テストの結果について、平均正答率が同程度の他の4県と比較分析したところ、正答数が少ない、いわゆる“落ちこぼれ”の割合が他県に比べ小中学とも大幅に少なかった。

 いまや全国の目標となった秋田だが、県教委は「秋田の子供は中学で伸び悩み、大学受験で低迷する」という。昨年度の大学入試センター試験の7科目平均点は全国34位。大学進学率は約43%で、全国平均の約53%を10ポイント下回る37位にとどまっている。19年度の東大合格者数も東北で唯一、1けたの8人で、43位と低迷している。

 なぜ大学受験まで高い学力を維持できないのか。その答えは、19年度の全国学力テストの中学生の正答数分布に表れている。小学生では「全問正解または1問不正解」という高正答率者の割合が全科目で比較対象の4県を上回るが、中学生では逆にすべての科目で下回った=グラフ。

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 つまり、秋田の中学生は「平均値で他県を上回るが、上位層が薄い」(県教委)。その理由を県教委関係者は「中位偏重」にあると指摘する。

 「学習内容が平易な小学生の間は理解の速い子、遅い子とも伸ばせるが、内容が高度な中学生での両立は困難。教師としてはできる子供は後回しになる」。この中位偏重は高校で一層顕著になり、「平均値は良いものの、高レベルの競争になる大学受験で結果が残せない」という。

 その半面、一般的に大学進学者が少ない専門高校からの大学進学率は全国トップレベルで、学力中位層の厚さを証明している。

 「(上位層が薄いのは)これまでの教育方針での行き過ぎた平等主義の弊害もある」と県教委関係者。秋田の県民性には「おれもやらないからお前もやるな」というマイナスの横並び意識が強いとされ、「教師や子供、保護者に進学や立身出世の意欲が薄い」と教育関係者は口をそろえる。

 秋田大の佐藤修司教授は「秋田は歴史的に裕福な地域で、競争意識が希薄。他人より目立つのを避ける横並び意識が、中位偏重と全体の好成績の背景の一因」と分析。その上で、「他の自治体が秋田を参考にしたくても、生活環境が似た家庭が多いほか、少人数学級や風土など秋田独特の事情を考えると、単純に参考にはならない」と話している。

 教育評論家で国際医療福祉大の和田秀樹教授は「秋田は東大進学者が少なく、学習塾主催のテストでも必ずしも成績がよくない」と上位層の薄さを指摘した上で、「できない子供が少ないということは、義務教育がうまく機能しているから。できる子を伸ばすのは義務教育の責任ではない」として、秋田の教育を評価する。

 また、和田教授は「失業率が高い県は平均点が低いなど、成績の差にはさまざまな要因がある。そうした関係を明らかにするためにも全国学力テストの成績公表が必要であり、点数がいいから“秋田に学べ”ではない」と最近の風潮にくぎを刺している。
posted by どんぐり教育研究会 at 00:00 | TrackBack(0) | 全国学力テスト
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